初めて来店されるお客様に、来店理由をお聞きし、体調やお悩みを確認、お部屋へ案内して施術を行い、次回予定をいただいてお帰りいただく。おそらく大まかな流れはどのサロンも変わりません。
技術者であるエステティシャンは比較的、施術内容や施術の質、技術、接客について大切であると回答される方が多くみられます。もちろん、丁寧な接客も大切ですし、技術がおざなりではサロン自体の価値はありません。しかし、自分の接客が本当にいいものか、技術が間違いなくお客様にとってのベストかどうかに気づける人は、ほとんどいません。なぜなら、最高のモノを提供していると誰もが思っていますし、接客や技術の良し悪しを数値化して可視化することはできないからです。もちろん、接客や技術はしっかりしていることでしょう。ただ、それらが間違っている!という話ではなく、それでも離れていくお客様は存在する、という話です。
例えば、化粧品で考えると皆さんにも根本的な離脱原因が見えてきます。A社の化粧品を使い続けている場合、どのような時にB社の化粧品に乗り換えるでしょうか、また乗り換えた後も使い続けるでしょうか。乗り換えるきっかけは、サロンで言うところのキャンペーンであったり、おススメであったり、ワクワクするプレゼンテーションであったり、様々です。では、一時的に動かされた心をずっと留めておく要素は?これはA社の化粧品を使っていた時よりB社の化粧品を使った際に効果を実感できた時じゃないでしょうか。
わかりきった話のように思えますが、さらにこれを細分化して考えます。効果は実感できた!でも皆さん少なからず経験があると思いますが、実感できたにも関わらずC社の化粧品へ変えたりしたことはないですか?
この時に自分の肌がどんどん良くなっていると“実感し続け”られたら?C社の化粧品に乗り換えなかったのではないでしょうか。この“実感し続ける”ということが継続する最大の理由であり、最適解になります。
しかし、サロンにおいて、効果を実感させ続けるということは非常に困難なものになります。よく言うところの「効果は個人差があります」等の文言があります。これは不特定多数の人を対象にした商品やサービスを広報する際に使われます。お客様は来店して初めての技術に効果を実感すると思いますが、これが継続して来店した時には効果に慣れてしまい、初回の感動は薄れてしまいます。こうなってしまうと効果を実感し続けることができずに、別のサロンや技術に流れて行ってしまいます。つまり、良い接客や技術を提供しているにもかかわらず、お客様自身の効果実感がぼやけてしまい、離脱につながります。
では本文の序盤で確認させていただいた、来店からお帰りいただくまでの中で大切なフェーズは?という問いの答えになります。それは「お悩みの確認」です。お悩みの確認、それに対して的確なアドバイスも行っていると思います。お客様のお悩みに対応するための技術や商品をしっかりとおススメしていることでしょう。しかし、お客様のお悩みが解決するまでのフローをしっかりと伝えている人は多くないのではないでしょうか。
人間は贅沢な生き物です。すぐに実感できる効果には反応することができますが、ゆっくりとした効果を実感できる人は多くないのです。つまり、すぐに結果が欲しい!というのが多くのお客様の願いです。そこで、ゆっくりとした効果を実感するには2つの重要な決め事が必要になります。1つは最終的にどうなりたいか!という最終目的地、2つ目は最終目的地に向かうための途中の目印です。スマートフォンにあるGoogleマップで目的地を検索し道順を選ぶ際に、必ず途中の目印を見て道順を決めているはずです。道路を無視してまっすぐに目的地へ向かう人はいませんよね。これと同じくお客様にお悩みを聞いた際に、まず最終的にどうなりたいのかを確認すること、そして最終目的地をしっかりと共有すること。そして、最終目的地への行き方を“具体的”に示すことが大切です。いつの段階でどのような変化があり、それを経てどういった効果を得ることができ、その後に最終目的地に到達できるという、目標達成のロードマップをしっかりと示してあげることで、ゆっくりとした変化を、小さな目標達成の積み重ねにより目的を果たすことができると、初めて理解してもらうことができます。
ここまでしっかりとロードマップを示すことができれば、あとは途中にある目標に届いているかどうかをチェックすることで、お客様は少しずつでも目的地との距離が縮んでいることを実感し続けることができ、離脱する理由はなくなります。ご来店いただいたお客様に自店の良いところを沢山知ってもらうためにどうしても伝えることに一生懸命になりがちですが、最終目的地までのロードマップこそが自身の接客や技術が、いかに大切なものであるか!を理解していただく最大の納得材料になるため、カウンセリングを店舗利用の流れの一つとするのではなく、大切なファクターとして理解することが大切です。